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2014.04.24 (木)

「 “異常”の国、韓国をどう読み解くか 」

『週刊新潮』 2014年4月24日号
日本ルネッサンス 第604回

中国と韓国が反日で足並みを揃えている中で、中国の反日の動機を理解することは可能だ。日本を憎悪すべき敵に仕立てて中国共産党の求心力を高め、党への非難を回避するのが最大の目的であろう。

理解し難いのが、朴槿恵大統領の反日である。北朝鮮の軍事的脅威が現実のものとなっているいま、北朝鮮を背後で支援する中国に接近する意味や、北朝鮮有事の際、確実に朝鮮半島を自国の影響下に置こうとする中国に頼る利点があるのか、理解に苦しむ。有事の際、韓国が頼れるのはアメリカと日本しかいない。

その日本に背を向け続ける朴大統領の外交について、元駐日韓国大使館公使で統一日報論説主幹の洪熒(ホン・ヒョン)氏と対話した。言論テレビの番組、「君の一歩が朝(あした)を変える!」でのことだ。

洪氏は、朴大統領は国益追求以前の地平で足踏みしており、状況管理しか出来ていないと分析する。つまり、今の状況を悪化させないように管理するのに精一杯だというのだ。

韓国の国益のために為すべき事が山積しているにも拘わらず、朴大統領には適切な対処を期待出来ない。それは朴大統領ひとりの責任ではなく、金泳三、金大中、盧武鉉と3代続いた「左翼的大統領」が残した負の遺産ゆえであり、韓国の融和策で北朝鮮は対韓国戦に絶大な自信を持つに至ったと、洪氏は語る。

「金正恩は対韓戦争準備を終えており、戦争になれば絶対に勝つとの軍事的自信を持っていると思います」

「軍事的」という前提つきではあるが、絶望的に貧しい国家になり果てた北朝鮮が絶対的自信を持つのはなぜか。

「最新の武器や装備を持つ韓国とアメリカに通常戦争を挑めば、イラク戦争やアフガン戦争のように勝ち目がないことは明白です。しかし、米韓同盟と米軍の盲点や弱点を突く非対称戦で先手を打てば勝てると考えていると思います」

2,351対1の闘い

非対称戦とは通常の戦争ではなく、テロやゲリラのような戦いで、北朝鮮の場合、化学兵器や核兵器、サイバーにおける先制攻撃などが考えられる。また韓国全土を戦場とする戦い方も同様だ。この3月、4月にかけて、北朝鮮の無人機3機が韓国内に墜落した。うち1機はソウル市にまで侵入し、青瓦台(大統領府)上空を高度300メートルの低空で飛び、193枚の写真を撮っていた。

仮に無人機に化学兵器を積み込み、上空から投下すれば、韓国は大混乱に陥る。洪氏が指摘した。

「北朝鮮が無人機を飛ばすことを想定した領空防護の体制を韓国がとっていなかったのは確かですが、あの無人機は小型で性能も限られています。ただ、サイバー戦争では北朝鮮は圧倒的に有利です。韓国へのサイバー攻撃は日常茶飯で、先月にも韓国国防科学研究所が北朝鮮にハッキングされました。

同研究所は韓国の新兵器開発などの中心的組織です。そこのコンピュータは勿論、インターネットにつながっていませんが、今回、大量の情報が盗まれました。しかし韓国は北朝鮮に報復出来ません。彼らはコンピュータ社会とは程遠いからです」

非対称戦を基軸とする限り、北朝鮮にとって米韓同盟は「張り子の虎」つまり、脅威ではないというのだ。北朝鮮にはもうひとつ、自信を持つ理由がある。韓国政府中枢に巣くう親北朝鮮勢力の存在である。

立法、行政、司法の三権の内部深くまで北朝鮮シンパが食い込んでいることはすでに広く指摘されてきた。たとえば全国会議員300人中、61名が国家反逆罪などで起訴され有罪になった人々だ。祖国を潰そうと目論み、有罪となった人物が国会議員の20%を占めている。その内、統合進歩党の李石基議員は北朝鮮有事の際に北朝鮮と呼応して、韓国のどの役所を占拠すべきか、どの武器庫で武器を調達すべきかなどを秘密会合で話し合っていたことが判明し、有罪判決を受けた。だが、祖国攻撃を具体的に企てていたこの議員を韓国国会は処分できていない。李氏は現在も議員資格を有している。

「立法府の奥深くまで、親北朝鮮勢力が浸透しています。司法府も行政府も同様です。その状況下で、いま北朝鮮が目指す3つの目標は、・国家保安法の撤廃、・国家情報院の解体、・在韓米軍の撤退です」と洪氏。

3つの目的が達成されれば、北朝鮮のスパイや工作員にとって、韓国は天国のように活動し易い場所になる。そのことは韓国国民にもわかるはずだ。なぜ、彼らはこのような政治の流れに反対しないのか。洪氏は、それを2,351対1の闘いだと語る。

「大統領が全てではない」

韓国には2,352の高校があり、歴史の教科書は8種類ある。7種類が共産主義や社会主義を讃える内容で、この内のどれかを採用した高校が2,351校だった。

「たったひとつの高校が、8種類の教科書の内、残るひとつのまともな教科書を採択したのです。7種類の教科書は、李承晩大統領を『独裁者』とし、金日成や金正日を正しい指導者と位置づけています。韓国の自由主義経済を非難する一方で、北朝鮮のとんでもない経済体制は批判しないのです。韓国をアメリカの植民地として蔑む一方で、北朝鮮の国家運営は何ら非難しない」

現実を見れば、韓国の方が北朝鮮よりはるかにまともで成功した国であることは容易にわかる。だが、偏向教育が恐ろしい効果を発揮し、わかるはずのものをわからないようにしているのである。

こうした状況下で、冒頭で指摘したように、朴槿恵大統領は状況管理にとどまっている。ただ、洪氏をはじめ、韓国の保守の人々は、状況が変化すれば如何なる政権も変化に対応して決断を下すと考える。

「いざとなれば大決断を下さざるを得ない。きっかけは、北朝鮮の核ミサイル実戦配備のときか、来年に迫る米韓連合軍司令部解体のときか、親北朝鮮勢力による内乱勃発のときか。いずれも遠い将来のことではなく、近未来の危険です。そのときには、朴大統領といえども決断すると思います」

洪氏はこうも語る。

「いま、オバマ大統領は弱腰だと非難されています。けれど、オバマ大統領がアメリカの全てではありません。同様に朴大統領も韓国の全てではありません。ヨーロッパが何十年もかけて冷戦を乗り越えたように、我々も必ずアジアの対立や冷戦を乗り越えるという意思を持つべきです。日韓は互いに同じ側に立つ国です。その意識が大事だと私は思います」

朴大統領の反日は許し難いが、韓国が政治的反日から脱皮出来る日が来るように側面から働きかけることは日本の国益でもあることを忘れたくないと、私は考えている。

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